意外に知られていない「かつお」の知識
さば科。かつおは「鰹」または「松魚」(松の木は硬いことからきている) と書き、「干すと硬くなる」ことから、「堅魚→かつお」になったとされています。
南方の海で生まれ、黒潮に乗って北上し、3月が九州、4月が紀州、5~6月に伊豆~居総沖に達し、さらには、宮城県金華山沖まで北上し、10月になると脂の乗った かつおが、東北沖より南下を始めます。
「目には青森 山時鳥初鰹」(山口素堂)の初がつおは、季節のはしりとしての珍しさから、そそっかしい江戸っ子が食べたもので、実際は「女房を質に入れてでも食べたい」と言われるほどは、旨いものではありません。
本当に旨い かつお は、脂が乗り切った秋の「下りがつお」「戻りがつお」でしょう。「菜種の花が咲くと、 かつお が釣れる」と言われる鹿児島や土佐は鰹節で有名ですが、春に捕れるこの地域の かつお には、まだ脂が少なく、鰹節にせざるを得なかったのでしょう。鰹節とこんぶを使ってダシをとるのは、鰹節の旨味の主成分であるイノシン酸と、昆布 のグルタミン酸が一緒になって相乗効果が出るためです。 かつお は刺身にするのが一番おいしいのですが、たたき、照り焼き、蒸し物も美味です。
かつお は脂肪の含有量が少なく、タンパク質の含有量は獣肉以上、しかも脂肪酸は中性脂肪やコレステロールを低下させる EPA や、脳を活性化させる D HA が含まれています。血合い(身の赤黒い部分)には、ビタミンA・B1・B12や鉄が豊富に含まれているため、体力低下時や病後の滋養食として適しています。三浦半島の三崎港では、昔から かつお の血合い部分をキモと生姜と醤油で煮付けて強壮剤的に用いていたのも、理にかなっています。