意外に知られていない「そば」の知識
タデ科、バイカル湖から中国の東北地方が原産。「続日本紀」に「元正天皇の養老6(722)年は夏のひでりがひどく、稲が枯れ、大飢饉になったので、そばを植えるように命令が出された」という記述があります。
「そば75日」と言われるように、種をまいた後50~70日で収穫され、酸性のやせた土地でも寒冷地でも栽培可能で、育てるのにもあまり労力がいらないので、当時から救荒作物として、重宝がられていました。
元来、農民の主食として、「そば団子」や湯で練って作る「そばがき」が食べられていましたが、江戸時代初期の慶長年間にうどんやそーめんのようにひも状の麺にすることが考案されてから、大衆に広まっていきました。
このように麺にすることを「そば切り」と言い、つなぎには小麦粉が用いられます。小麦粉の混入率は10~80%といろいろですが、50% 前後の同割りが一番一般的です。
そばの特産地は、信州、出雲、盛岡、秩父などの寒冷地である上、外観が濃い色なので、体を温める作用を有する陽性食品です。「江戸っ子はそば好きで、関西人はうどん好き」と言われるのも、関東が関西より寒いのが一因でしょう。外国にも、ロシアの「カーシャ」(そば粥)、ポーランドの「ソバプディング」、フランスの「そば粉のクレープ」など、寒い国にソバ料理が存在するのも、この理屈からよくわかります。
そば粉は、色が黒いものほど栄養分が多いと言われますが、確かに薄い色のそばより、鉄、カルシウムなどのミネラル、B1、B2などのビタミンの含有量が多くなっています。
また、そばは8種類の必須アミノ酸を含む良質のタンパク質と、消化されやすいでんぷん、それに血管を強化して脳卒中などを防ぐルチン(ビタミンP)、脳の記憶細胞の破壊やボケを防ぐソバポリフェノールやコリンなども含む上に、そばに含まれるアミノ酸には、脂肪の増加を抑える作用があることがわかっています。
そばは「気分をおだやかにし、腸を寛げ、能く腸胃のつかえ(老廃物)を排泄します。また、水腫、泄痢、腹痛、上気を治す」と効能が並べ立ててあるのも、十分にうなずけるわけです。