意外に知られていない「小麦粉&パン」の知識
イネ科の小麦は世界の国々の半分以上で主食にされており、稲と並ぶ人類の二大食用植物で、1万年以上も前から栽培されてきた最古の作物の1つです
ヘブライ、フェニキア、古代エジプトなどの地中海沿岸の人々は、小麦粉に水を加え、こねて焼いたものを主食にしていました。ある時、古代エジプトの主婦がブドウのしぼり汁で穀物の粉をこねたのですが、うっかり放置してしまい、太陽にさらされたこの穀粉が夜になると芳香を放っていた、ので焼いてみたところ、フワーツと膨らみ、味も香りもいつものものと比べて格段によくなっていた、という偶然が、今日のパンを作ったと言われています。
放置している間に、空気中を飛散しているイースト菌がくっつき、太陽熱で発酵したわけです。ブドウ汁(ブドウ糖) を混ぜていた偶然も、発酵を助けるのに幸いしたことになります。
日本では、パンは明治時代に「あんなしマンジュウ」として登場。しかし、1872年(明治5)年、銀座の木村屋が「あんパン」を考案して売り出すと、たちまち「西洋マンジュウレとして広まりました。つまりパンは、日本ではご飯の代用ではなく、あくまでお菓子だったわけです。今でも「ご飯を食べないと、何となく力が入らない」と感じる日本人が多いのは、千年以上もコメに慣れ親しんできたDNAが言わしめているのかもしれません。
小麦はこめと比べるとタンパク価は低いし、精白した小麦にはビタミン類、ミネラル類の含有量が非常に少ない。しかし、精白前の小麦胚芽にはB1・B2・Eなどのビタミンの他、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムなどのミネ、食物繊維が存分に含まれているので、欧米では最近、ガンをはじめ、種々の病気を予防するために、全粒麦のパン(黒パン)を食べる人が多くなっています。また、最近は、低糖質のパンも人気です。
小麦は、漢方では「涼性」、つまり体を冷やす陰性食品です。よって、体を温める陽性食品の肉と合うわけです。しかし、欧米人に比べて肉食の量がうんと少ない日本人が、体を冷やす牛乳や生野菜と一緒に白パンを食べるという現代の若者風の食事をすると、体温を低下させる原因となります。現代人を悩ませているアトピー、喘息、膠原病、生理不順、高脂血症、糖尿病、そしてガンですらも、漢方で言うと、体温低下(冷え)からくる陰性病で、こうした食生活もその原因の一翼を担っていると考えられるわけです。