意外に知られていないなすの知識
インド原産のナス科の一年生、または多年生草本。
日本では奈良時代から栽培されており、江戸後期には最も需要の多い野菜の1つでした。「親の意見となすびの花は、千に一つのムダもない」と言われるように、「なす」は「よく成る(為す)」という意味からきています。
「秋なすは嫁に食わすな」ということわざがありますが、「秋なすは大変旨いので、憎い嫁に食べさせるともったいない」という解釈と、「なすは体を冷やす陰性食品なので、気温が低下してくる秋に食べさせると流産などが心配だ」という解釈が考えられます。
しかし、「本草綱目」(中国・明代・李時珍著)に「なすは性が寒冷で多食すれば必ず腹痛、下痢し、婦人は子宮を傷める」とあるので、後者の解釈が正しいようです。
このようななすの「冷やす作用」は、打ち身、捻挫、やけどなどに湿布薬として用いると効果を発揮します。
江戸時代の『本朝食鑑』にも、「なすは血を散じ、痛みくつろを止め、腫れを消し、腸を寛げる」とあります。冷え性や低血圧の人がナスを食べる時は、体を温める作用のある塩や味噌を加えた料理にして食べるとよいでしょう。焼きなすをおろししょうがで食べたり、漬物に刻みしょうがが添えられるのも、体を温めるための知恵です。
なすの栄養価は大したことはありませんが、ビタミンCやPが多く含まれているので、血管をしなやかにし、高血圧や血栓症の予防や改善に役立ちます。また、果皮の色素であるナスニンがコレステロール値を下げ、動脈硬化を防ぐことも明らかにされています。このナスニンは、加水分解してデルフィニジンを生じ、これが鉄やニッケルと安定な塩を作ります。なすの漬物に鉄釘を入れておくと漬物が青紫色になるのは、このためです。