意外に知られていない「いわし」の知識
いわし科。遠洋漁業に依存しているわが国で、 いわし は、近海の漁獲量で間に合っている数少ない魚の1つです。
水揚げされるとすぐ死に、酸敗や油焼けを起こしやすく、風味もすぐになくなるため、漢字で「鰯」と書くのも納得できます。
食用となるのは、まいわし、かたくちいわし、うるめいわし、きびなごなどで、めざしやしらす干し、たたみいわしなどの加工品にもされる重宝な魚です。
古くから食べられていた魚で、かの紫式部(978~1014年頃) も大好物であ ったと言われ、夫から「宮中に仕える身なので、あまり食べると魚臭くなる」とた しなめられた式部は、「いわし」と「石清水八幡宮」をかけた和歌で、「日の本にはやらせ給う石清水まいらぬ人はあらじと思ふ」と、お返ししたと言います。
「いわしで精進おち」とか「いわしの頭も信心から」など、昔からいわしはとるに足らないものとして扱われ、大変安価でした。
ただし、いわしには、血栓を防ぐEPAや脳の働きを高めるDHAなどの不飽和脂肪酸の他に、カルシウムがいわし 100 g中270 mgと多く、カルシウムの吸収を20倍もよくする ビタミンD も豊富に含まれているので、 骨粗鬆症 の予防や精神の安定効果は抜群です。
また、老化予防成分の レチノール や 核酸 、脳神経の働きを高める ナイアシン 、 アドレナリン の原料になる テロシン なども含まれるので、健康増進および病気や老化予防効果の極めて高い魚と言えます。
他にも、ビタミンA ・B2・B6・D ・E などや鉄分、アミノ酸バランスのよいたんぱく質をも存分に含んでいる、まさに栄養素の宝庫と言うべき魚です。こうしたことから「いわしは海のにんじん」とも言われています。