意外に知られていないさといもの知識
熱帯アジア原産のサトイモ科の多年生草本。
日本へは稲渡来以前の縄文時代に、すでに中国から伝来しており、『万葉集』に出てくる「宇毛」がさといもとされています。
山里で一般的に栽培されているので「山芋」に村して「さといも」と命名されたようです。
旧暦8月15日(中秋の名月)は、別名「芋名月」と言い、すすき、はぎ、おみなえし、さといもが供えられますが、元来はさといもの初物を祝う収穫祭であったと言われます。
江戸時代の「大和本草」には「湿地を好む。山中の農多く植えて糧として飢を助けて甚民用に利あり」とあり、さといもが重要な救荒食であったことを示しています。
「本草綱目」には、「生で食べると有毒で、昧のえぐい物は食べる可からず。魚と一緒に食べると、甚だ気を下して中を整え、虚を補う」とあります。
でんぷんが多く含まれ、そのエネルギー化を助けるビタミンB1、脂肪の燃焼を助けるビタミンB2の他、たんぱく質も十分に含まれ、消化・吸収もよく、老人、子供、病人の栄養補給に大変すぐれています。
さといも特有の成分として、粘液質のムチンやガラクタンがあります。ムチンは、タンパク質の消化促進、滋養強壮、潰瘍予防、解毒などのすぐれた作用があります。ガラクタンはガラクトースを成分とする多糖類で、脳細胞を活発にする働きがあります。
いもや葉柄(いもの茎)の皮をむくと手がかゆくなるのは、シュウ酸カルシウムのためで、さといもを食べた時の苦い味もこの物質のせいです。いもは、田楽、塩ゆで、イモ汁に、葉柄は汁の具、漬物などに利用できます。この葉柄は「ずいき」とも言われ、皮をむいて乾燥させて保存食品として利用されてきました。