意外に知られていない「なし」の知識
バラ科。日本、中国、欧州原産。伊サレルノの医学校で使われた教科書には、「なしを食べれば小便、りんごを食べれば大便」とあります。
中国の古書にも「なしは大小便を利し、熱を去り、渇を止め、痰を開き、酒毒を解す」とあり、「百果の宗」と呼ばれていました。
漢の武帝は庭園になしを植えたと言います。中国の北方は乾燥していて咽頭炎や気管支炎などを患う者が多く、それを予防するためだったとのこと。
なしを含んだ漢方薬の「雪梨膏」は、咽喉頭炎や気管支炎を伴って声がれした時の特効薬。実際、のどが痛い時や風邪の時になしを食べると痛みが和らぎ、痰も出やすくなるのをよく経験するものです。
「本草綱目」に「なしは利で、その性は冷利なり」とありますが、「なしには、体を冷やす働きがあり、種々の発熱性疾患に対して、解熱を促してくれる」ことを言っているわけです。漢方の古書「神農本草経」になしが「薬」として記載されている理由がよくわかります。
栄養素としては、果糖、リンゴ酸・クエン酸などの有機酸、ビタミン・ミ、そフル類、精油( リナロール) などが、微量ですがバランスよく含まれるので、夏ばてする時期の食欲増進や疲労回復薬としての効能が期待できます。また、肉料理の消化を促進してくれる消化酵素が含まれているので、肉食の後のデザートにおすすめです。果実がザラザラとした感じがするのは、石細胞と呼ばれる繊維の塊のためであり、便秘に効果があります。
ちなみに、わが国の歌舞伎界のことを「梨園」と呼ぶのは、唐の玄宗皇帝がなしのたくさんある庭園で、役者に芝居を教えた、という故事からきていると言われています。